私は半角@をつけてファインダーさんを呼び出す。
「いま、TIに着きました。」
「おう、早かったな。町の広場で待っててくれ。すぐ行く。」
町の広場には、若い冒険者が屯(たむろ)している。
私は掲示板を背に、行き交う人を眺めていた。
と、
「ファルクじゃないかい?」
ウィザードが声を掛けてきた。
「?」
「僕だ。」
ウィザードが頭巾を少しずらす。
「あ、カ…」
「待て、ファルク。今はHoichiだ。」
ウィザードが鋭く言う。
*****
Hoichiさんは私の故郷一帯を治めていた領主の三男だ。
幼かった私たちに手品を見せてくれたり、毒草の見分け方を教えてくれたりしていた。
数年前の領地替え以降は見かけなかったが、ウィザードになっていたのか。
それにしても
異様なまでのオーラが古びたローブから滲(にじ)み出す。
私は村の最後を伝えた。
「そうか、それで騎士を選んだのか・・。」
遠い目つきでHoichiさんが言う。
「ファルク、いつ来た。」
私はつい先日、渓谷を追い出されたことを告げる。
「じゃ、まだ大変だろう。お祝いだ。」
Hoichiさんは私の正面に回ると、こっそり品物を出した。
祝福されたテレポートスクロール(b-tere)
ドーベルマンの首輪
ヘイストポーション(GP)
:
持ちきれない程の荷物を押しつける。
私がなにも言えない内に、Hoichiさんは人混みに消えた。
「今の人、知り合いかい?」
いつの間にかファインダーさんが来ていた。
Hoichiさんの雰囲気に押されて、声を掛けられなかったらしい。
「昔、お世話になった方です。」
「結構、顔が広いんじゃないか、ファルク。」
ファインダーさんが笑う。
「とりあえず、犬小屋だ。」
ファインダーさんに連れられて町の西門を出る。
少し離れた所に、犬小屋があった。
チールが私を見つけて、一声吼えた。
どうした具合か、キグナスもいる。
私は大急ぎで二匹を引き出すと、背をなでる。
チールは少し、痩せていた。
私はチールに肉をやると、小屋に戻した。
「今日は狩に行かないのかい。」
ファインダーさんが、笑う。
「それがいいかもしれないな。今日は疲れたろう。俺も寝落ちするよ。」
「はい、お疲れさまです。」
「俺は今、TIを足場にしているから、そのうち一緒に狩に行こうぜ。」
「お願いします。」
頭を下げた私の耳に微かな声が響く。
@「ファルクと二人で落ちるよ。」
@「おつー」
お疲れさま。
久しぶりのトワさんの声だ。
@「あんたたち、今どこ?」
@「TIでーす。」
@「ファルク、いつ来たの?」
@「今着いたところです。」
@「そっか、良かったね。」
@「はい」
@「あたしもTI、行こうかな。」
@「俺はもう眠いよ。」
@「ファイは寝ていいよー。」
@「ひでー」
目の前のファインダーさんは、声を出していない。
それでも会話ができる。
@「ファルクはどうする?」
私もまねして答える。
@「私も寝ます。」
@「そっか、じゃ明日遊ぼうね。お休み」
@「お休みなさい。」
私はファインダーさんが去っていく(落ちる)のを待った。
そして私も寝についた。
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