10.スケルトン
深い森を抜けると、島の東は広い砂地だった。
照りつける太陽がまぶしい。
「この辺だね。」
「だな。」
トワさんとファインダーさんが頷きあい、間隔をとる。
私はまだ、状況が掴めない。
ふいに
砂漠に陽炎がたつ。
誰か、近づいてくる。
疲れ切った様子で両手を下げ、フラフラと寄ってくる。
声を掛けようとする私の耳を、鋭い矢音が貫く。
トワさんが弓を使ったのだ。
同時に4匹の犬と、ファインダーさんが駆け寄る。
疲弊した冒険者が盾を上げ、剣を構える。
戦闘
呆然としている私に、トワさんの叱責が飛ぶ。
「ファルク、行きなさい!」
慌てて駆け出す。
ようやく駆け寄った時には、戦闘は終わっていた。
倒れた冒険者を、ファインダーさんが漁る。
「失敗だ。」
私は信じられなかった。
ファインダーさんが、
トワさんが、
人を襲い、
殺す!
振り向いたファインダーさんの目は、いつものように笑っている。
「どうした?あぁ、こいつか。」
「なぜ?」
私の問いに答えたのは、トワさんだった。
「ファルク、よく見て見」
倒れた冒険者に眼を移す。
?
なにか、変だ。
「そいつはスケルトンって怪物よ。」
私は自分が見たものを、やっと理解した。
痩せているのではない。
相手の顔に、腕に肉がない。
全身に骨しかないのだ。
「こいつは、放っておいても襲って来るんだ。」
ファインダーさんが教えてくれる。
「もとは人間だったのかも知れないけど、ね。今は死にきれない怪物よ。」
トワさんが、言う。
私は気を取り直して、聞く。
「失敗って、どういうことです?」
「見せてやるよ。」
ファインダーさんが荷物袋を開ける。
不思議な色合いの、小さな骨片。
「ボーンピース(骨P)って呼ばれてる。これがこいつらを動かしてるらしい。
この骨Pを使って作る防具は軽くて丈夫なんだ。でも、うまく倒さないとこいつが
割れちまって使い物にならないんだよ。」
「ファイはさっき、これで作った兜を落としちゃったのよ。だから、集めに来たって
わけ(^^)」
「うぅ(;;)」
なるほど
相手が人間でなければ、遠慮はいらない。
肩の緊張を解いた私に、トワさんが号令する。
「わかったね(笑)。じゃ、次、いくわよ」
*****
スケルトンは後から後から襲ってきた。
トワさんの弓と、ファインダーさんの剣、そして犬たちの牙で次々倒してゆく。
私はただ、走り回っているだけだ。
スケルトンに向かう途中で、別の一体がトワさんの背後に現れた。
方向転換
可能な限りの駆け足で、戻る。
やっと一太刀。
相手の骨を削る。
スケルトンが振り向く。
眼球のない眼窩が、オレンジ色に光っている。
恐怖
心は凍りついたが、身体は反応した。
幾度も切り結ぶ。
トワさんの弓が援護してくれる。
と
切っ先が相手の胸の骨をかすめた。
瞬間、スケルトンは砕け散る。
「ふふ。やったじゃない。」
トワさんが微笑む。いつの間にか、ファインダーさんが後ろで眺めている。
「それでいいよ、今は。でも骨P、割っちゃったね。」
「すいません。」
「それで充分さ。誰がやっても、めったに取れるものじゃない(^^)」
ファインダーさんが笑う。
トワさんが小休止を宣言する。
渓谷で学んだように、私は二人を中心に周囲を巡る。
「何、やってんだ?」
「索敵行動」
「いいから、座って休みなさい(笑)」
トワさんが、言う。
「警戒なら、犬がしてくれてる(笑)」
確かに二人の犬は、私たちから少し離れたところで眼を光らせている。
私は迷った。
大事な二人に万一のことがあったら・・。
と、犬が走り出す。
弾かれるように、ファインダーさんが飛んでいく。
トワさんの弓が鳴る。
反対側にいた私が追いついたとき、戦闘は終わっていた。
「そんなもんだよ。警戒した反対側に、敵はいるもんだ。」
やれやれ
次へ…