何体かのスケルトンを倒した。
どうしても出遅れる。
「ファルク、ヘイストポーション(GP)使わないの?」
「めったに使いません。」
二人があきれ顔で私を見る。
「騎士は武装が重いから、どうしても動作が遅くなるんだ。上手に使った方がいい」
ファインダーさんが教えてくれる。
「でも、薬物に頼るのは・・」
「それはそうさ。常時使えって言うんじゃない。状況を読めってことだよ。」
「騎士には、もっと強い薬もあるの。でも、ファルクにはまだ早いわ。」
トワさんが言う。
「周りの状況、自分の状態、相手の強さ、いろいろ飲み込んだ上で判断できるまでは
GPだけにするのよ。いいね?」
「はい」
私は答える。
「さて、そろそろ陽が暮れる。帰還しよう。」
ファインダーさんが言う。
「ファイ、集まった?」
「だめだな。」
ファインダーさんがため息をつく。
トワさんが
にやっ
と笑う。
「帰還スクロール(帰還スク)で帰るわよ。ファルク、持ってる?」
「はい」
「じゃ、TIの街で合流ね。」
ファインダーさんが飛び、トワさんが飛ぶ。
私は最後に残って、砂漠に沈む夕日を見た。
流れた血、流れなかった血の色を見た気がする。
夕日の中に、影が動いた気がする。
私は、帰還スクを使った。

*****

街の掲示板前でトワさんが待っていた。
「ファルク、あんまり叩けなかったね。」
「はい」
「出してごらん。」
私は持ち物全部を渡した。
「ファイ、君もだよ。」
「わかってるって。取りあえず、売ってきたよ。」
「サンキュ、気がつくね。」
トワさんは私たちの荷物を預かると、どこかへ出かけていった。
「?」
「あぁ、稼ぎを分けられるように売りに行ったんだ。」
「分ける?」
「精算っていって、うちはクランハント(クラハン)の稼ぎは頭割りなんだ。
じゃないと一緒に行っても取れるやつ、取れないやつが出ちゃうだろう?
トワはそれが嫌なんだよ。」
トワさんが戻ってくる。
「あんまりなかったから、これだけね。」
ファインダーさんと私にアデナをくれる。
「こんなに?私はこんなに取ってません。」
二人が笑う。
「だから、精算なのよ。今のファルクがファイと同じだけ稼げるなんて思ってないわ。
でも、一緒に頑張ったんだもの。堂々と受け取りなさい。」
返金しようとする私にトワさんが、言う。
「でもね、騎士は強くなるわ。そうすると全部騎士が取っちゃうかも知れない。
ファルク、いい?出来るだけみんなが公平になれるように考えるの。ファルクが手に
入れたアイテムは、ファルク一人の力かどうか。エルフやWizが協力してくれなけ
れば、生きて帰ることだって出来ないかもしれないんだから。
「アデナや赤Pはみんなが使えるわ。でも、それぞれのクラスにしか使えないものも
あるの。必要とする人がうれしいって思えるように、分配するのよ。」
トワさんが話してくれる。
「さて、俺は行くよ」
ファインダーさんが言う。
「骨P、集めなきゃな。」
「ちょっと待ってて。」
トワさんが引き留める。
倉庫に向かおうとして、振り返る。
「ファルクも、いてね。」
陽はすでに暮れ、星が光りだしてきた。
暫くしてトワさんが戻ってくる。
「ファイ、これ」
「おー、でもいいの?」
「うん」
「じゃ、いま作ってるの、どうしよう。」
「ファルクが必要になったら渡して上げて」
「わかった。ありがとう」
ファインダーさんが落ちていく。
「ファルクには、これね」
「?」
私を振り返って、トワさんが差し出す。
ブーツ
「どうして?もらえない。」
「いま、靴でしょ?少しでもACを下げなくちゃ」
「でも」
「一緒に行動するみんなのためよ。騎士が強ければ、安全が増すんだから。いいね?」
「はい」
「じゃ、私も行くね。」
トワさんが落ちていく。
私は受け取ったブーツを履いてみる。
わずかだが、動きやすくなった。
私は赤Pを補給し、東を目指した。



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