13.勇者の証

洞窟を出ると、陽が傾きはじめていた。
私は@マークをいれた。
@「やりました」
@「なに?ファルク、なにやってたの?」
トワさんの声がきつい。
@「何度も呼んでたのに、黙ったままじゃ心配するでしょう?」
@「すいません」
私は謝った。
@「まぁ、いいじゃないか。で、なにをやったんだぃ?」
ファインダーさんが間に入ってくれる。
@「グンターの試練に合格しました!」
@「おめでとう!」
@「おめ」
いくつもの祝福が送られてくる。
@「でも、ファルク。お前、昨日渓谷を出て、TIへ真っ直ぐ来たんだろう?」
一瞬、クランチャット(クラチャ)が止まった。
@「はい」
@「今日の朝だけで、そこまで上げたのか?」
@「はい」
みんな、明らかに急ぎすぎだと思っているらしい。
@「で、これからどうする?」
トワさんが聞いてくる。
@「骨の装備を買いたいから、狩り場を回ります。」
@「骨セット、欲しいんだ。」
@「はい」
@「アデナ、貯まった?」
@「これから貯めようと思います。」
クスクス笑いが聞こえる。
@「了解よ。頑張って。」
@「はい」
@「でもね、クラチャには答えなさい。逝っちゃったかってみんな心配するから。せめて
来た時と落ちる前には挨拶しなさい。」
@「私が来たとき、誰もいませんでした。」
@「そっか。じゃ、誰かが来たときに挨拶してね。」
@「はい」
私は街に戻り、RKSとバサ斧とPOTをいくつか残して、荷物を倉庫に収めた。
チール、キグナスを引き連れ、島中を巡る。
私のRKSは良くヒットした。
悪くない。
が、
相手へのダメージに波があった。
クリティカルヒットするときもあれば、逆に私の身体を傷つけることもあった。
だが、その気まぐれ加減が、どこか私と似ていた。
仲良くやろうぜ、相棒。

*****

夕方近く、街に戻った。
ふと、掲示板を見る。
勇者の印イベントの詳細が出ていた。
対象は男性のみであること。
個数に応じてグルのプライムが各種の指輪をくれること。
期間は一週間であること。
勇者の証は以下のモンスターが持っているかも、しれないこと。

あまり関係ないな、と思った。
ふと荷物袋を見ると、勇者の証が30個ばかり入っていた。
今朝のケリーママの言葉を思い出す。
(女性は参加できないの・・。)
私は思った。
(今日の幸運はケリーママの祝福のお陰だ。この証を指輪にして、感謝を示そう。
それで私にとってのイベントは終わり。)
私はグルへの最後の船に乗った。
船はのんびりと進み、陽が沈みきる頃、グルの港に着いた。
プライムはグルの街の道具屋前に立っていた。
イベント初日のことで、誰も彼に話しかけない。
私が近づくと、うれしそうに話し始めた。
「お前は本当の勇気があるか。それを示すチャンスをやろう・・・。」
私は話し終わるのを待たずに、証を全部、プライムに渡した。
プライムは顔をしかめて数え、言った。
「36個あるな。6個は返す。希望と情熱、どっちがいい?」
「希望、と情熱?どう違うんです?」
「そう呼ばれてるだけさ。この指輪に意味はない。」
なにか言い淀んで、プライムが答えた。
「・・・希望」
指輪と証の余りを受け取って、TIに戻ろうと思った。
もう船はない。
ふと考えた。
私にはもう一人、感謝を示さなければいけない人がいる。トワさんもまた、イベントに
参加できないでいるのだ。
私は迷った。
指輪は一つ。恩人は二人。
答えは直ぐ出た。もう少し、集めよう。
掲示板の告知を今度はまじめに読んだ。
勇者の印は、以下のモンスターが持っているかも知れない。
・・・・・・大蜘蛛、ウェアウルフ、ドワーフ
前の方のモンスターは、まるで見たことがない。
多分、私では相手に出来ないだろう。
と、なると実質的な相手は3種類。
私は装備を調えると、単身グルの街を後にした。


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