14.ボーンピース
眼が覚めると、朝日が射していた。
しかし、今日の空はどこか冷め切っている。
半角@で挨拶しても、まだ誰もいない。
昨夜の骨セットを身に付ける。
軽い、これはいける。
私は犬を取りに、ケント〜グル街道を進んだ。
テレポートを使わず、単身で歩くのは初めてだ。
途中、ウェアウルフを狩って行く。
勇者の証が他のアイテムと共に集まる。
ぶどう園を過ぎた頃、街道脇にドワーフを見つけた。
道を逸れて、追う。
そのドワーフを狩ると、少し離れた所からドワーフウォリアが覗いている。
追い、狩る。
また別の一匹。
いつしか街道をだいぶ離れた。
まずいな。
引き返そうとした私の背後から、カサカサという聞き覚えのある音が近づいてくる。
あの蜘蛛だ。
私は振り返り、攻撃に出ようとした。
が
マウスカーソルが、画面中央で動かない。
パニック
ファンクションキーを忘れて、ポインティングパッドでマウスカーソルを【帰還スク】
に合わせようとするが、うまく動かない。
蜘蛛の攻撃が続き、私は意識を失った。
***
気が付くとケントの街。
妙に身体が軽い。
「あ!」
私はボーン・ヘルメット(骨ヘル、骨兜)とボーン・シールド(骨盾)を身に付けて
いなかった。
慌てて荷物袋をかき回す。
ない
昨日、トワさんから受け取ったばかりの装備を、早々に失くすとは・・。
「・・慢心・・」
骨セットのおかげなのに、強くなった気がして自分の実力を見失っていたのだ。
愚かな・・。
重い挫折感に座り込む。
高価な装備を失くした事よりも、トワさんの心尽くしを汚した気がする。
(どうしたものか・・。)
半角@で聞く気には、なれない。
とりあえず、昨夜までのドワーフの盾と兜を引き出す。
POT類を揃え、犬達と街道を行く。
ドワーフ、ウェアウルフを狩りながら、南下する。
荷物が嵩張(かさば)りだした頃、珍しい声が流れた。
>「ファルク、イベント、やってるかい」
Hoichiさんの声だ。
>「そろそろ、試練かな?」
>「グンターの試練は、昨日受かりました。」
>「ほぅ、ズイブン早いじゃないか。次は骨セットだな(^^」
骨セット。胸にズキッっとくる。
>「骨セット、昨夜、姫さまから買ったんですが・・。」
>「うん」
>「さっき・・・、蜘蛛に・・襲われて・・」
>「げ。なにか落とした?」
>「盾と・・・、兜・・・。」
>「二つ?信じられない・・。」
>「・・・」
>「ファルク、いまどこ?」
>「グルの手前です。」
>「掲示板で会おう。」
Wisが切れた。
足取り重く、グルに向かう。
***
荷物を売りさばいても、POT類を補給するといくらも残らない。
動物の皮とランプメタル(ランメタ)だけが数を増やしていく。
掲示板にいくと、Hoichiさんが待っていた。
「災難だったね」
「・・・私の不注意です」
私は事情を話した。
「そうか・・。私の予備の盾、売ってやろうか?」
「でも、予備を失くしたら、困るでしょ?」
「落とさなきゃいいだけさ(^^)」
「でも・・。」
「ナイトは装備がなくちゃ、仕方ないだろ?」
「はい」
「今日は時間がないから、急いで決めて」
「じゃ、売ってください・。」
「うん、500A」
「それじゃ、あんまり安すぎです。」
「あはは、じゃ、1k」
骨盾を受け取る。
「あとは兜、か。こっちは使わないからな〜」
Hoichiさんがなにか調べている。
「ファルク、ランメタと皮、骨Pはいくつある?」
「ランメタは22、皮は200くらい、骨Pは2個です」
「じゃ、骨Pだけだな。ついて来な。」
Hoichiさんはケントに向かう街道を進み、途中から右に折れて森をいく。
と
森が開け、赤茶けた不吉な場所に出た。
「BK荒地って呼ばれてる。ここはケントにもグルにも近くて、スケルトンが多いから、
ここで骨Pを狩ったら良い。」
「来たこと、ありません」
「じゃ、1時間くらい付き合ってやるよ」
Hoichiさんが荒地に踏み出す。
と、向こうからゾンビが寄ってきた。
Hoichiさんの魔法と杖、私のRKSで倒す。
もう一匹、寄ってくる。
駆け出そうとする私に、Hoichiさんの声が飛ぶ。
「ファルク、毒消し、持ってるか?」
「持ってきていません」
「じゃ、あいつはFA取らないように。あれは、グールっていうんだ」
一つ一つこの荒地の説明をしながら、Hoichiさんが敵を倒していく。
グールには毒があること。
青白いスケルトンは、スパルトイ(スパ)と言って、格段に強く、その上危なくなると
逃げること。
4人一組の黒い騎士(BK)は、アイテムはいいが、かなり強いこと
それぞれ1対1の手合わせをさせてくれ、およその感触を得た。
次へ…