15.迷走の兆し

イベントの日々は飛ぶように過ぎていく。
周囲の意識が【勇者の証】に集まる中、私の関心はレベルアップだけにあった。
(トワさんやファインダーさん達と、PT組んでいきたい)
頭にあるのは、それだけだった。
こんな立ち話がきっかけだった。
ある晩、ケントの武器屋の前を通りかかると、Lv40を超えるエルフが元のクラン員
たちと言い争っていた。
Lv40を超える、はクランマークなしにタイトルをつけていたからだ。
エルフは、友情不信から引退を決意していた。
原因は2つ
ひとつはクランのプリンスが、新入の女性キャラと二人でばかり行動すること。
それを諌めるべき副官もまた、クランの和に興味がないこと。
もうひとつは、親友と思っていた人に引退を相談したとたん、「くれくれ君」に
なってしまったこと。
「俺は、クランの誰も、クランを守ろうって気がないのに絶望したんだ。」
「じゃ、あの女たちを追い出せばいいのか?」
「そうじゃない。自分の行動が周りにどんな影響を与えるか、考えないプリと、
それを黙認するお前達に愛想が尽きたんだ。俺がなにか言う度、疎まれるのに
嫌気がさしたんだよ。」
「なら、その鎧、いらないな(^^。)」
「こんなもの、くれてやる!!たかがデータじゃないか!!」
「冗談だよ、怒るなよ」
「あいつも、同じことを言ったよ。引退するなら、要らないだろうってな」
「あんなに親しかったじゃないか」
「あいつは俺の装備と親しかったのさ、俺とじゃなかったんだ」
「まぁ、もう少し話し合おうよ」
「明日、全部の装備を牛にでも入れてやるんだ・・」

***

詳しい内容は、もちろんわからない。
どうなったかも、知らない。

だが、これは言える。
どんなに好きでも、プリは独占してもされてもいけない。
今、レベルの関係もあって、私はトワさんとしか行動を共にしていない。
この状況を、ファインダー先輩や他の人たちは、どう感じているだろう。
私はトワさんに、クランに甘えすぎていないか?
トワさんを独占せずに、一緒に行動するには・・・。
だれかの、できればファインダー先輩の4レベル以内に追いつくしか、思いつかなかった。
装備の充実もなく、稼ぎは全てPOTに変わった。
ぎりぎりのところで、モンスターと渡り合った。
HPの最後の数値を、先にゼロにした方が、負け。
そんな繰り返しだった。
たまにトワさんと同道する以外は、誰とも組まない。
魔法も弓も使わない。
武器はバーサーカ斧とRKSだけ。
自分と、チール・キグナスだけの肉弾戦。
知り合いはHoichiさん、ケリーママ、トワさん、ファインダー先輩だけ。
寂しいとか、そんなことを感じる余裕もない日々だった。
ある日、ケント〜グル街道の少し東でウェアウルフとぶつかった。最中、ライカン
スロープとウェアウルフのチームが襲い掛かってきた。
太刀打ちできない。
チールの
キグナスの
そして自分のHPが見る見る減っていく。
ランダム・テレポート
出たところは砂漠。
しかも、バジリスク(バジ)とジャイアント・アント・ソルジャー(GAS)の間に
割り込むような着地。
バジのブレスに凍りつく。
GASが噛み付いてくる。
チールとキグナスが当惑している。
「!h」
その一言だけしか、発せられなかった。
すぐ近くにいた女性Wizと、プリンスに率いられたPTがモンスターを引き受けてくれた。
HPは残ったが、完全な敗北。
ウッドベック村(WB)にたどり着いてから、クランに連絡。
結果
独りで砂漠禁止。
私はTIに戻り、以後、買い物以外は引き篭もった。


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