装備の全てを倉庫に預け、戻る。
順番待ちはなくなっていた。
ガードは無愛想に、洞窟の入り口へ通してくれた。
中は真っ暗だ。
微かに異臭が、ある。
中のガードがキャンドルとダガーを一つずつ手渡された。
私は礼を言って受け取った。
「これは返さなくてもいい。生きて戻って来ようが、そうでなかろうが」
キャンドルに灯を付け、辺りを照らす。
階段ホールから、四方に通路が分かれている。
ホールの端に両手を広げた骸骨が吊されている。
私は通路の一つを選び、角を曲がった。
ガゥッ
狼がいきなり噛みついてきた。
ダガーだけでは、狼も強敵だ。
揺れるキャンドルの明かりで攻撃が定まらない。
あちこち噛みつかれながら、どうにか撃退する。
息が、上がる。
疲労が抜けない。
最初の入り口を抜ける。
ガゥッ
また、狼が襲ってくる。
入り口を潜り、通路を曲がるたびに狼が襲ってくる。
何頭の狼を倒したか、分からない。
闇に輝く野獣の眼は、増えるばかり。
一旦後退。
しかし、道が分からない。
勘を頼りに戻る。
やはり無数の狼に襲われる。
眼が回り、頭が動かない。
揺れる視線の中に階段を見つけた。
追いすがる狼を振り切って、転がるように洞窟から逃げ出した。

***

洞窟の外は、すでに夜になっていた。
地面に倒れ伏して、休憩。
どうにか元気を取り戻し、洞窟に戻ろうとした時、ガードが声をかけてきた。
「ゲラド師の言葉を聞いてなかったのか?洞窟内には何も持ち込んではならない」
狼を倒した時手に入れた少なからぬアデナや宝石、毛皮からキャンドルやダガーまで
没収された。
再び身一つで洞窟に戻り、キャンドルとダガーを受け取る。
やはり異臭がある。
息を細めて、深く吸わないよう注意する。
今度は道を覚えながら、進む。
息を殺しながらの戦闘は、かなりきつい。
何度も外へ待避しながら、洞窟探査を続ける。
いくつもの行き止まり。
羊皮紙を拾った事もある。
流れる血で、覚えている限りを【地図】にする。
どうせ、次には持って入れないのだが・・。
キャンドルの灯りを、キラリっと反射した物が落ちていた。

これがウェアウルフの部屋の鍵か。
拾い上げるのもつらいほど、だるい。
戻り道の最初の角で狼に襲われた。
倒す力は残っていない。
逃げようとする。
狼が何頭も寄ってくる。
倒す間もなく囲まれ、抵抗する。

そのまま意識を失った。

***

気が付くとSKTの広場
立ち上がる気力も、ない。
へたり込んでいると、聞き覚えのある声がした。
「ファルク、こんなところに座って、なにしてるの?」
トワさん!
「ゲラド師の試練を受けて来たんです。」
「え〜!で、どうだった?」
「どうにもなりませんでした」
「まぁ、頑張って(^^」
「鍵を見つけるのが、精一杯(;;)」
「ファルク、レベルいくつ?」
「21です」
「あはは、まだ無理よね。普通40位の人が受けるんだもの。あれは何度でも受けられ
るから、今日は休みなさいね」
去りゆこうとするトワさんが、振り返る。
「そうだ。明日、クラン復活させるから、ちゃんと来るんだよ(^^」
私がその言葉を理解する前に、トワさんは出かけて行ってしまった。


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