気がつくとTIの町。
@「ファルク、大丈夫?」
@「いま、TIです。なんだったんでしょう?」
@「・・落ちたのよ(^^」
これが回線断というものか。
戦闘中だったら大変なことになるところだった。
@「今日はお開きにしようね」
@「残念です」
@「この次は、あの奥を教えてあげるね^^」
それからしばらくは、TIで骨狩りして過ごした。
東の海岸で、南の荒地で、TICで。
その日も南の荒地に向かっていた。
狩場に着いたとき、ワールドチャット(全チャ)に衝撃が走った。
<ケリーママの引退式を行ないます。知人の方はケントに集まってください>
見間違い?
確認するには、出かけるしかない。
船はおろか、TIに戻るのさえ間に合わない。
わずかなb−テレの一枚を使って、ケントに飛んだ。
犬小屋に犬を預け、ケリーママがよくいた辺りを歩き回る。
何時にもまして人だかり。
みな、静かな悲しみにうな垂れている。
ママに良く似た、アイリスというWizが手を振る。
話しかけようとした時、集団がアイリスさんを中心に移動し始めた。
目指す先はぶどう園。
1人のエルフ女性が話し始める。
「ケリーママは、ある事情から、このワールドを引退することになりました。」
見間違いではなかった。
話は続いているが、ショックで耳に入らない。
「・・では、引退の前にケリーママの結婚式を行ないます」
悲しみの舞台が、一瞬にして華やぐ。
歓声が上がる。
少し離れたところから、見事なオーラを纏った、プリンスが歩み来る。
Jingaさん
動きに、言葉に、力があり、輝きがある。
おぉ
これが、真に【プリンス】という存在だ、と直感した。
誓いの口付けが交わされる。
祝砲代わりに魔法が辺りを彩る。
騎士を目指し、魔法の使えないことを、この時ばかりは悔やんだ。
アイリスさんが話し始める。
「みんなありがとう。ケリーママはもう、消しました。もう二度と戻れないでしょう。
私のために集まってくれた、大事なお友達たち。ケリーママは幸せです。
私のことは忘れても、お互いの友情は、・・忘れないで」
「私たちは、ケリーママを忘れない!」
周囲の高位者を跳ね除けて、大声で叫ぶ。
アイリス(ケリーママ)が、涙に濡れた眼を向け、微笑んでくれる。
「今まで本当に、ありがとう。・・私、・・もう、・・いくね」
ケリーママが、消えた。
周囲で涙が流れ、嗚咽が広がる。
Jinga皇子が話し始めた。
「ケリーママは、このワールドが嫌で、去ったのではありません。すべては過日のEZ/TVの報道にあるのです。」
EZ/TV
私も、見た。
隣国の情報が、流れていた。
リアルの小動物を追い回す実写シーン。
記者のキャラを、あるいは無視し、あるいは殺すシーン。
大規模な戦争で殺しあう様を、誇らしげに語るシーン。
「ケリーママは、あんなワールドにいることは子どもの教育に良くない、とリアルの
家族に反対されたのです。そして、急な引退、となったのです。」
周囲は驚きと怒りの声で満ちてきた。
私は思わず、叫んだ。
「あんな報道に惑わされない、いつでもケリーママが帰ってこれるリネージュを作ろう!」
賛同の声と拍手が起こる。
気がつくと、隣にトワさんが、いた。
「ファルクはケリーママ、好きだった?」
「はい」
「トワも、だよ」
「・・・私の221は・・ケリーママの友達番号なんです」
トワさんの瞳が見開かれ、顔色が失せる。
「私は、ケリーママの悲劇を繰り返さない、そんなワールドを探る旅を始めます。」
「・・どっか行くの?」
「どこも、行きません。ここで探します。」
自分の目標を見つけた興奮。
私はトワさんを見ていなかった。
視線は、輝くJinga皇子に向けられていた。
いつの間にか、トワさんは去っていた。
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