7.砂漠の宝石

王道は逸れやすく、王徳は歪みやすい。王質とは?
竹流さんにくっ付いていると、昔ゲラド師の講義を反芻(はんすう)させられる。
騎士の、常に自問すべきリドル。

こんな場面を想定してみよう。
最小限、プリだけでもたどり着けば勝利。ただし、時間は残り少ない。
追っ手は多くすぐ背中に迫っている。
相手をしていてはタイムエンドが眼に見えている。
かといって、逃げ切るのは不可能。
誰かが足止めし、時間を稼がねばならない。
ただし、その者に生き残れる可能性は、ない。
1.可能な限り生き残れそうな者に後を任せ、勝利を確定させる。
2.泣いて人選し、勝利を目指す。
3.可能な限り生き残れそうな者に後を任せ、勝利後、独りで泣く。
4.自分も共に残り、勝利できない。
独断と直感で言えば、Jingaさんは、1.のタイプ。王道を直進できる。
ヘロヘロさんは2.のタイプ。人心を掌握しつつ、前進する。
竹流さんは?3か4。今は4タイプだが、3の可能性を色濃く秘めている。
トワさんは?
いずれでもない。5のタイプ。
5.はじめから、そんな戦に出かけない。
竹流さんが3.タイプなら、将来そんな場面では、足止め側に指名されたいものだ。

***

急に思い立ってのPT。
向かう先は、砂漠北。
ナイト2人、Wiz2人。そして竹流さん。
完全にHoichiさんのBB頼みの構成。
「まぁ、どこまでできるか、やってみましょ^^;」
WBの東門を抜けながら、竹流さんの号令。
Hoichiさんが詠唱を始めようとしたとき、
「あの、狩りについていっても、いいですか?」
犬を連れた若い騎士が、声をかけてくる。
鎧だけが骨製。バサ斧。
「それはいいけど、貴方のレベルは?」
「10です^^」
私たちは、息を呑む。
「ふむ・・。いったい、どうしたの?」
「それが、犬を取りに来たらSKTに帰れなくなっちゃったんです。アデナを稼ごうにも
相手が強くて・・・(;;」
在りし日の、ハイネを想いださせる。
「事情はわかったけど、貴方の武装とレベルじゃ、一緒に行っても逝っちゃうだけよ。
アデナ貸してあげるから、渓谷に戻ったほうがいいね。」
「でも・・」
「今は恥ずかしくても、それが貴方のためだと思うよ」
「・・わかりました。お借りします。」
竹流さんはその時の所持金全てを渡した(らしい)。
「でも、どうやって返そう・・。」
「友人登録、しておけば?」
私が口を挟んだ。
アデナ云々でなく、彼の素直な気性と輝く瞳に引かれた。
間違いなく、この人は私より強くなる。
一級品のプリと共に、真っ直ぐ育ちさえすれば・・。
「友人登録ってどうやるんです?」
「右下の2人シルエットのアイコンをクリック→
「友人オプション→
「友人の登録→
「全角カタカナで ファルク」
私も彼の名前を登録した。
「できた!」
「友人一覧で、でてる?」
「出てます^^。僕、友達って始めてw」
「私も3人目(^^」
皆が温かい眼で、その素直な騎士を包む。
「じゃ、さようなら」
「さようなら、じゃないでしょ」
「え?」
「またね、友達(^^」
「あ、そうか。またです〜^^」
「またね」
「頑張って」
「渓谷を追い出されるまで、渓谷でやれよ〜」
騎士がWBの町へ戻っていく。
「さて、倉庫代もなくなっちゃった。気合入れるぞ〜w」
私は、騎士を見送っていた。
彼の名は、Daiyamonde と綴られていた。

***

(昨日の人、頑張ってるかな?)
私はDaiyamonde君に手紙を一通、送った。
渓谷を卒業したら、Wisして欲しいこと。
そしてWisのやりかた。
手紙を送って、さて、と出かけようとした時、
>「 」
>「お、Daiyamondeさん」
>「できた^^」
>「順調?」
>「昨日のうちに卒業しちゃいました〜^^」
>「おぉ、早いね〜」
>「昨日のプリさん、います?」
>「なんで?」
>「ご挨拶だけでも(^^;」
>「あい、まってね」
竹流さんを探す。
>「昨日の騎士さん、憶えてます?」
>「憶えてるよん^^」
>「Daiyamondeさん」
>「そうそう」
>「渓谷卒業したから、挨拶したいって」
>「うぃ、WBにいるね」
再びDaiyamonde君
>「WBにいるよ」
>「了解です」
WBのテレポートにDaiyamonde君を迎え、竹流さんの所まで誘導する。
後は、知らない。
私はケントの西の森へ出かけていった。
しばらくホブゴブリンとドワーフウォリアからランメタを狩る。
チャット欄にメッセージ
¥f1.Daiyamondeが室町幕府血盟に加入しました。
@「新人です。ヨロシクです〜^^」
@「あれ、加入したの?」
@「えへへ」
@「WizのGanosaです。ヨロシクね」
@「騎士のまつじです。よろしく」
【蒼い流星】の誕生である。

***

私はケントの西の森と、リザ砂漠を狩場にしていた。
まっちゃんや百地丹波さんに誘われても、骨相手は気が進まなかった。
リザ砂漠の主は、狂鳥ハーピー(ハピ)。
傷つけば空に逃げ、麻痺の魔法を使う。
私は何度も挑み、ほとんど敗れていた。
ひどい時は、一羽のハピを倒すのに、WBへの帰還を3度もする有様だった。
ハピの影を踏み、わざと襲わせる。
魔法のターゲットを外せても、鋭い鍵爪まではかわせない。
GPと赤P必須。
それでも、一度では倒せない。
赤Pや肉を餌に、上空に逃げたハピを引き摺り下ろす。
時には餌だけを持ち逃げされたりも、する。
麻痺魔法がかかってしまった時は、麻痺するまでのわずかな時間を使ってWBに帰還。
ともかく、手間がかかる。
そんなハピを楽しげに狩っていく女性Wizを見かけた。
静かに、
たおやかに、
深みのある声で詠唱。
地面を隆起させる衝撃波で、上空のハピを打ち落としてゆく。
魔法が発動する際、彼女は銀の粉に包まれる。
Hoichiさんの力強さとも、ガノさんの真摯さとも違う。
まさに麗しい銀粉の舞。
彼女が去った後も、呆然と立っていた。
気がついたとき、リザ数頭に囲まれていた。
慌てて帰還。
私って、Ahoだなぁ・・・ふぅ。

***

気を取り直して、WW城の東を周る。
ハピが上空に、2羽。
と、そのうちの一羽が舞い降りていく。
そして、ヒューっと落下。
さっきの女性Wizがハピの死骸を検(あらた)める。
「こっちにもいます」
去っていこうとするWizに声をかける。
「いいの?」
「はい」
「ありがと^^」
女性Wizの声が、ファンファーレのように響く。
ハピを打ち落とし、はにかむ様に去っていく彼女に、崇拝のような憧れを感じた。


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