10.ハンターボウ
Loginすると、あやさんと百地丹波さんが話をしていた。
@「ランメタ集めてるんだけど、なかなか、ねぇ」
@「少しならあるよ。いくついるの?」
@「1000個(^^」
@「そんなには、ないなー(笑)」
@「だって、鉄セットだもの。ファルク、いくつかある?」
@「10個なら倉庫に入れます」
@「サンキュー」
@「実際、いくついるんです?」
@「取り敢えず、あと100個、だな」
その日の狩り場が決まった。
***
ケント〜グルーティオ街道のケント寄りはドワーフとドワーフウォリアがランメタを出す。
でも、私はケントの西の森を目指した。
ホブゴブリンのランメタドロップも、なかなかなのだ。
狩り場は空いていた。
ホブゴブリン、ドワーフウォリア、蜘蛛を狩っていく。
赤P30個が切れる頃、ランメタ20個その他で荷物が膨らんでくる。
ケントで売りさばき、補給し、狩り場と往復する。
倉庫のランメタが100個を越えた。
(そろそろ、別の狩り場に行こうかな?)
その時、森陰から、緑色の巨体が音もなく寄ってきていた。
初めてみる、オーガ!
オーガの巨大な斧が、降ってくる。
木が邪魔で、体(たい)をかわせない。
RKSで受ける。
ギィ〜〜ン
爆発したような衝撃を受け、吹き飛ばされる。
チールとキグナスが飛びかかる。
オーガにとって、私の剣よりも2匹が邪魔だったようだ。
オーガの斧が、チールの背中を襲う。
完全にはかわせず、傷ついていくチール。
ついに、その背中を斧が引き裂いた。
一声悲鳴を上げて、チールが倒れる。
オーガは私を無視して、キグナスに襲いかかる。
キグナスの牙は、鋭かったが、オーガの皮膚はそれ以上に硬い。
キグナスも又、吹き飛ばされて、動かなくなった。
オーガが、振り向く。
私の剣を受け、血を流しながらも、斧を振り回す。
ドンッ
その一撃が死角から、背中の袋を直撃した。
宙を飛ぶ。
樫の木に、激突した。
そのまま意識を失った。
***
背中に満載されたランメタが命は、救ってくれた。
しかし、チールもキグナスも重傷だった。
ケントの犬小屋の番人に見せる。
しばらく診ていたが、暗い顔のまま口を開いた。
「こいつは、だめかも知れんよ」
「!」
「怪我が治るかどうかさえ、運、だ。まして狩り場に出られるかどうかは、分からん。
それでも、治療するかい?」
「お願いします」
「新しく買った方が、早いんだがな・・」
私たちのやり取りを聞いていたのか、♂エルフが話しかけてきた。
「騎士さん、犬、やっちゃったのかい?」
「はい」
「代わりはある?」
「ドーベルマンが一匹・・」
「オーガだろう?一匹じゃキツイな・・。売ってやろうか?」
「犬、買うのいやなんです」
しばらく♂エルフは考えていた。
「じゃ、弓、売ってあげる。オーガなら弓の引き狩りでいけるぞ」
私は、うまく矢を飛ばせないと言った。
♂エルフは私の弓を取ってこさせると、調べ始めた。
「どこといって、歪んでないよ。変だな・・」
私は弓を受け取ろうと手を差し出した。
♂エルフの眼が光り、腕を捕まれた。
「お前さん、人間、だよな?」
「はい」
「それにしちゃ、腕が・・。それなら良い弓がある」
♂エルフは肩から変わった弓をおろした。
動物の骨と木を膠(にかわ)でコンポジットしてある。
弓の前にバランスタブが飛び出している。
バランスタブには矢の通るガイドがついていた。
ガイドに矢をセットし、弓弦(ゆづる)を引き絞ると、バランスタブが自然に的を示す。
♂エルフは私を町外れに連れていき、何度も試射させながら、弓の微調整をしてくれた。
「やっぱり人間用の弦じゃ、だめか・・」
不思議に光沢のある糸で出来た弦に張り替える。
調整の済んだ弓は、面白いように矢を的に当て始めた。
「これはハンターボウって言うんだ。エルフメイドとは違うんだが、いい弓だ」
「譲ってもらえますか?」
「おまけ付きで3kだ(^^」
私はハンターボウと銀の矢1000本、ドーベルマン1匹を渡された。
***
「お前さん、人間用よりエルフメイドの装備が合いそうだ。覚えて置くんだね^^」
♂エルフに礼を言い、ドーベルマン2匹を引き連れて、森に戻る。
新しいドーベルマンは、以前Hoichiさんにもらった犬と同じ程度に訓練されていた。
体格も似ていて、区別が付きにくい。
私は古い方の一頭に「セフィーロ」と名付けた。私の好きな西風を意味する。
新しい方は、そのままにしておいた。
弓と骨盾+RKSを持ち替えながら、犬たちと息を合わせていく。
何度かオーガを見かけたが、誰か他の人を追っているものばかりだった。
その内、気が付いた。
オーガを狩りきれなくて逃げた場合、周りへの迷惑は他のモンスターの比ではない。
急にオーガに斬りつけられて倒れる人も少なくなかった。
私は再戦の場所を探し、河原を選んだ。
ここなら狩りきれなくても、だれも来ない。
森に戻る。
ホブゴブリンを狩りながら、オーガを待つ。
蜘蛛を相手に弓狩りを練習する。
気配を感じて森を窺(うかが)うと、オーガが、いた。
蜘蛛はセフィーロたちに任せて、弓を引く。
銀矢がオーガの肩に刺さる。
咆吼
しかし、オーガが寄ってくるまでに、2の矢、3の矢が突き刺さる。
蜘蛛を仕留めたセフィーロたちがオーガに向かっていく。
私は少しずつ後退しながら、矢を射続ける。
河原に誘導する。
ハンターボウは正確にオーガに矢傷を与え、犬に注意を向けさせない。
怒り狂うオーガ。
河原に出ても、オーガは倒れない。
大きな円を描き、追いつかれないようにしながら、矢を放つ。
弓弦が鳴り、オーガが吼え、犬が吠える。
どちらかが倒れるまで続く輪舞(ロンド)。
ついに、オーガが崩れ落ちた。
大したドロップはなかったが、私たちはオーガを倒せた。
***
その時からオーガと私は立場を逆転させた。
狩られる側と狩る側。
一本の弓が天秤の傾(かし)ぎを決めたのだ。
数匹のオーガを含めて、狩りを続けながらも、私の心は砂漠に飛んでいた。
クラハン中、犬とサモン・モンスターに混じって攻撃することは難しい。
だが、手がない、ではないのだ。
単純に騎士の戦闘に思えなかっただけ。
私はセフィーロたちを小屋に帰し、チール達の息づかいを聞くと、ギランに飛んだ。
落ちる前にクラチャを入れる。
@「だれか、います?」
@「私だけ^^」
あやさんだった。
@「じゃ、百地丹波さんが来たら、ランメタ100個集めたから、いるとき言って
くださいって伝えて」
@「はい^^」
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